言志四録より

言志四録の一八四条
「人の一生には、順境有り逆境有り。消長の数、怪しむ可き者無し。
余又自ら検するに、順中の逆有り、逆中の順あり。
宜しく其の逆に処して敢て易心(いしん)を生ぜず、
其の順に居して敢て惰心(だしん)を作(おこ)さざるべし。
惟だ一の敬の字、以て逆順を貫けば可なり。」

 

 

【訳文】
人の一生には、得意(万事都合のよい幸運)の境遇もあれば

失意(思うままにならず苦労多い不運)の境遇もある。

これは栄枯盛衰の自然の理法であって、少しも怪しむべきことではない。

自分が調べて見るに、ただ順境・逆境と一律にいっても、

順境の中でも逆境があり、また逆境の中でも順境がある。

それで、逆境にあっても決して不平不満な心や自暴自棄な気持を起さず、

順境にあっても怠りなまける心や満足な気持を起さぬようにするがよい。

ただ、敬の一字をもって順境・逆境を終始一貫すればそれでよいのである。

 

【所感】
人の一生には順境(良いとき)もあれば逆境(悪いとき)もある。

この消長の理法は宇宙の摂理に則っているので疑うべきものではない。

私が自分で検証したところでは、実は順境の中に逆境があり、逆境の中に順境があるものである。

それゆえ、逆境だからといって自分の想いを簡単に変えたりせず、

また順境のときには怠け心を起こさないことが大切である。

ただ敬の一字をもって順逆に対処すれば良い。